開催日:2024年2月24日(土)~3月4日(月)
「国民医療費無料」というシステムを世界に先駆けて構築し、「揺り籠から墓場まで」と謳われ福祉国家としての地位を築いたイギリスの医療システムを作業療法、理学療法、看護の観点から学びます。秋篠宮眞子さんが留学されたことでも有名になった学園都市レスターでは、臨床医学で世界18位のレスター大学見学やレスター大学医学生との懇親会、医療従事者から実際の現場での患者ケアのデモンストレーション、そして優雅なアフタヌーンティーを予定しています。また世界で最も観光客が訪れる都市トップ3常連のロンドンにも4泊滞在。世界的に有名なホスピス半日研修や日本ではありえない豪華な退役軍人の為の国立のケアホーム見学に加え、ロンドン観光も2日予定されているので、ゆっくりとロンドンを満喫することが出来ます。

セント・クリストファー・ホスピス(SCH)は1967年にシセリー・サンダース女史によって設立された、世界最大の緩和ケア教育機関の一つであり、また世界初の近代的ホスピスとして広く認知されています。SCHは2001年、コフィ・アナンから栄誉あるヒルトン・ヒューマニタリアン賞※を授与されました。
SCHでのデイケアサービスは専門的な臨床ケアに加え、支援ケアサービス、音楽やダンス、或いは文章を書くといった「アートセラピー」と呼ばれる最新のセラピーを使用したりと多岐にわたります。またSCHのアニバーサリーセンターでは、デイケアと外来患者サービスをSCHの活動範囲以外にお住いの患者さんにも開放しています。
驚いたことにSCHは病院としてではなく慈善団体として登録されており、経営を維持する為に必要な年間運営資金(日本円で約41億円)の大半を慈善事業や寄付金で賄っています。この慈善事業や寄付金で調達される金額は年間27億円にも上り、これにより、SCHを利用する患者さんとそのご家族はホスピスでの治療やサービスを全て無料で利用することが可能となっています。
慈善事業活動の一つとしてロンドン南東部に23の直営の路面店を構えていることは大変ユニークな取り組みです。それらを運営するスタッフは主にボランティアで、その直営店で売られる洋服、アクセサリー、本や日用品などのアイテムは地域の方々からの寄贈で成り立っており、その利益の全てはSCHでの運営の柱となっています。
この様にセント・クリストファー・ホスピスは、患者さん、及び患者さんのご家族やご友人の精神的や介護ケアを改善するためより一層緩和研究プログラムに取り組んでいます。プログラムで予定されている半日研修ではその活動内容を始め、施設や設備、ホスピスという中でも最後の瞬間までご家族の方々と安らかなひと時を過ごされている患者さん達の姿から何かを感じ取っていただければと思います。
※コンラッド・ヒルトン・ヒューマニタリアン賞:人類が対面しうる様々な苦難や痛みを軽減するために並外れた貢献をしたと判断された非営利団体に贈られる世界最大の人道活動賞。

今日のチェルシー王立病院の物語は300年以上前のチャールズ2世の治世に始まり、退役軍人のための施設を建設するという構想は、セントポール寺院などの建築を担った著名なイギリス人の建築家であるクリストファー・レン卿によって実現されました。
17世紀まで、イギリスでは退役軍人や負傷兵のための特別な治療や生活保護などは全く準備されておらず、貧しい人々や病人のためのケアは宗教団体によって辛うじて支えられていました。しかし、ヘンリー8世の時代にカソリック教会などが閉鎖に追い込まれると、このようなサポートすらも殆ど消滅してしまいました。
1681年、チャールズ2世は、こうした兵士の世話をする必要性に応え、「老齢や戦争で傷ついた」兵士の世話をするための王立病院チェルシーの建設を許可する勅許状を発行しました。この時にクリストファー・レン卿が建物の設計と建設を依頼されたのがチェルシー王立病院です。1692年にようやく工事が完了し、1692年2月に最初のチェルシー年金受給者が入所し、3月末までに476人が入所しました。
しかし、現代まで残っているのは建物だけではありません。国王チャールズ2世が、「国は退役兵に恩義がある」とこの病院を「王立病院」としてサポートしたことが今日の王立病院の精神につながっています。「チェルシー・ペンショナーズ(チェルシー退役兵/年金受給者)」として世界中に知られる王立病院の住人は65歳以上で、加えて事故や病気などで配偶者を失った独身者であること。そして、皆、人生のどこかの時点で軍隊に従軍した経験があり、今はその余生を同志であった退役軍人の仲間意識と談笑の中で和やかに過ごしています。
ここには病院、リハビリ施設、居住者の住居、郵便局や娯楽施設など、必要なものが敷地内に全て揃っており「小さな村」のような造りになっています。ツアーガイドを務めてくれるのは居住者である退役軍人の方で、広い敷地を丁寧に案内して戴けます。こういったツアーで運営資金を自らで捻出していくことも大変ユニークな試みです。リハビリや運動を兼ねこの様なツアーガイド役に積極的に参加し、またトラウマとなっている残虐で冷酷な戦争体験をお互いに聞き役になりながらカウンセリングし合うそのシステムは、他国の同じような施設の模範ともなっています。
3,000点の展示品を備え、病院のベッド1,500台分に相当する広さを誇るロンドン科学博物館に2019年に新たに設立された「Medicine: ウェルカム・ギャラリーズ」は、世界最大規模であり、また貴重な医学コレクションの本拠地として連日人気を博しています。
世界初のMRIスキャナー、フレミングのペニシリンの鋳型、イギリスの80年代に実際に使用された手術用ベッド、1930~50年頃にポリオ患者に使用された「鉄の肺」、プロのピアニストの義手、さらにはロボット手術器具など、ヘンリー・ウェルカムと科学博物館グループのコレクションから、歴史的に重要な医療器具や医学工芸品を展示しています。
一方で「医療ギャラリー」であるにも関わらず、拷問器具を始め、シャーマンの呪術の儀式に使用された器具や呪いの仮面…など、医療と言ってもかなり幅広いコレクションが展示してあるのが非常に面白い点です。また展示の中にはかなり奇妙奇天烈&グロテスクで奇々怪々な珍品も多く、イギリス人のコレクション熱には頭が下がります。興味深いコレクションの解説はこちらのサイトから日本語でご覧いただけます。
科学博物館には勿論、飛行機や自動車、宇宙探査機を始め、様々な科学系の展示物も所狭しとディスプレイしてありますので、興味がある方は博物館内の他の展示も是非ご覧ください。