講師のプロフィール

 実際にレッスンを受けるとなると、どの様な講師の方のレッスンを受けるのかは大変気になるところです。何人かいらっしゃる経験豊かな講師陣の中で、こちらでは特にマイヤーズ博士をご紹介させていただきます。

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お人柄:​大変な笑い上戸で「いいピアニストはよく笑う!」という持論を持つ。困窮している家庭の生徒からは授業料を受け取らずレッスンをする熱い人情家ピアニスト。自身が脱力に問題があり、26歳で脱力に関するトレーニングの研究を始め、現在では脱力トレーニングのエキスパートとしても活躍。

セーリア・マイヤーズ博士 

 ロンドンの王立音楽大学(Royal College of Music)で音楽教育を受け、後にイロナ・カボスとピーター・フォイヒトヴァンガーに師事。数々の世界を股にかけるコンサート活動と並行して英国および海外で多数のマスタークラスに招聘されている。また、コンセルヴァトワールや大学の作曲学生と国際的にプロジェクトを積極的に行い、トロント大学、ロイヤルウェールズカレッジオブミュージックアンドドラマ、ロンドンのロイヤルカレッジオブミュージック、トリニティラバン、ロイヤルアカデミーオブミュージックともプロジェクトを推進。

 

 王立音楽大学にて、プロ音楽家早期育成の為のプログラムであるRoyal College of Music Junior Departmentで約30年に渡りピアノ科科長を務め、超難関と言われるピアノ科の入学オーディションを一手に引き受ける。このピアノ科はイギリスのコンサートピアニストを目指す学生が必ず受けるといわれる、隔年で開催されるイギリス最高峰の18歳以下を対象とした音楽コンクール、BBC Young Musician of the Yearに優勝者かファイナリストを毎回の様に輩出するイギリス最高峰の音楽大学である。

 

 マイヤーズ博士はイギリスのピアノ界では大変著名であり、30か国以上でピアニスト、及び室内楽演奏者として活躍し、BBCイギリス公営放送を始めとして世界中で多くの初演とプレミア放送を開催。ハイドンやショパンのCDも発売し、クラシック全ての時代に造詣が深いが、特筆すべきは現代音楽を世に普及させる為、次世代の若手作曲家を発掘し、その作品を編集して世に送り出すプロジェクトを生涯に渡って行っているという点。1996年からシリーズでロイヤルスクールオブミュージック(ABRSM)から現代音楽の編纂者として180曲以上を世に送り出し、その中の作品はイギリスのピアニストを習っている多くの生徒が習得を目指す「英国王立音楽検定」の課題曲となっている。

 

 それらのイギリス音楽業界に長きに渡り貢献している功績・業績を認められ、イギリスの音楽界に貢献した10人の演奏家としてイギリス音楽界で最も権威のある賞の一つである『The Ivors Academy Gold Badge 2019を受賞。

マイヤーズ先生が感じる

ピアノ英才教育やオーディションの弊害

​脱力とマムシ指

 

 王立音楽大学のジュニア部門では、イギリスのみばかりではなく、ヨーロッパ全土から地元で『学校イチのピアニスト』『神童』と呼ばれているような8歳から18歳までの子供達が学んでいます。生徒達は、学業と音楽を両立させるべく、平日は地元の普通科の学校で学業を学び、土曜日を全日使ってロンドンで音楽の勉強に勤しみます。プロの音楽家を目指して小さいうちから音楽専門の小学校・中学校の様な全寮制の学校に入る選択もありますが、ジュニア部門に入学できれば、プロの音楽家になる為の専門の勉強を続ける一方で、最終的にプロを目指すか否かという選択を16・7歳まで伸ばすことが出来るので大変人気です。

 

 人気であるが故に弊害も生まれます。最近は動画などで小さな子がラフマニノフやリストなどを演奏するのを見ることもあります。「あのレベルの超技巧の曲を弾かないと合格しない」と周りの大人達が信じ込み、まだ手が小さなうちから子供にオクターブの連続や大きな跳躍がある曲を与え、オーディションで演奏させたりします。

 

 その為かどうかは私にはわかりません。昔から練習の為だと言って指に負荷をかけたり、長時間練習をして指をダメにしてしまったピアニストは数多く存在します。ただ、難易度の高い曲を急いで教えることに専念するあまり悪い癖を放置してしまった結果、例えば手首を固定したままで演奏をしたり、或いは手や指にまだ正しい筋肉が付いていない(俗にマムシ指という)手で、脱力をせず、力任せに演奏をする子達に(オーディションやコンクールで)出会うことがあります。

 

 手が小さい頃から難曲を弾きこなすために気が遠くなるような時間を練習に費やし、無理な姿勢で肩や腕に力を入れたまま、音を外さないように機械のごとく反復練習を繰り返し行った結果、(オーディションで出会う子供の中には)まるで精巧なピアノを弾くロボットみたいに見える子供もいます。

 多分彼らのピアノの先生達も日々直そうとされているのだと思います。そんな悪い癖があるまま練習していても、ある程度までは上達しても、そこからの伸びは殆ど期待できないからです。ですが、出来ない。コンクールに入賞する為には練習を続けるしかないと思われているのかもしれません。この様な子供達は素晴らしい技術を既に習得している大変な可能性を秘めたピアニストでもあるので、そんな子供達に、『数か月ピアノの練習をしないで脱力を学びましょう、必要な筋肉をつけていきましょう、マムシ指を直しましょう』と提案すれば、『そんなことをしていたらピアニストコースから完全に脱落してしまう!』と感じられてしまうかもしれません。故に目先のことが優先となり、長期的な目標は後回しになるということも同じ教育者として大変よくわかります。

ケーススタディ

​様々な問題を抱えた子供の演奏

 

 8歳の男の子がオーディションを受けに来ました。小さい手で難しい曲を弾きましたが、私の心を掴んだのはその演奏ではなく、その子のマムシ指と、まるで棒のようにガチガチに力が入って、腕すらも自由に動かすことが出来ない上半身でした。「このままではこの子はあと数年で伸びなくなってしまうのではないか。近い将来、腱鞘炎や腰痛にも悩むようになるに違いない」という思いから、私が引き受けて教育することにしました。余りに酷すぎて目に留まったわけです(笑)

 オーディション受験と同時期の演奏。肩が上に上がったままで、上半身にかなり力が入っていることが分かる。腕は脇に付いたまま自由に動かすことが出来ない。

 左手の指は指の根元が凹んでしまうマムシ指。弾いている際には、両方の小指が手の重さを支えきれず、小指側に手が倒れ込んでくる癖があり、親指は鍵盤の下に力無く垂れ下がってしまうことが多かった。跳躍や難しいフレーズを弾くたび、力が入る為、顔を歪めて弾いているのが痛々しかった。

​ 同年代の子供達に比べて格段に音が弱く、それを補うためにさらに力を入れる悪循環に陥っていた。

​3ヵ月ピアノを弾かせず柔軟体操から始める

 

 最初の3か月間は、今まで弾いていたような難しい曲を弾くことを禁止し、非常に短く簡単なツェルニー練習曲のみを出来るだけゆっくり弾くことに終始しました。同時に全身と腕の脱力トレーニングを毎日30分~1時間、根気よく続け、毎週のレッスンでは、それらのトレーニングが正しく家でも行えているかどうかのみをチェックしました。3ヵ月のトレーニング期間が終わると、今度はブルグミュラー程度の曲を約半年間弾かせました。技術的に難しい曲はないので、弾いている間でも手首の柔軟性、身体のバランス、姿勢、手の形といったことに集中でき、『1つが出来れば、その次のトレーニングに移る』を繰り返しました。これらのトレーニングは本人が好きな曲を弾くようになっても、その後約2年間続きました。

 トレーニング開始から4年。身体の柔軟性を重視したトレーニングの反動からか『身体(特に頭)を動かしすぎる』傾向があった。頭を上下に振るのが癖になり、跳躍をする際に音が外れることも多く、また音の強弱にも影響することが多々あった。

 指や手首はかなり改善されていたが、上半身の動きはまだ固く、脱力が完全ではない。再度脱力や手首の柔軟性のトレーニングを始めることを指導した時期であった。

​「大きくなれば自然に治る」「もっと練習すればできるようになる」という考え

 

 伸び盛りの、しかも現在難しい曲も弾けている人に「1年間は初見で弾けるような簡単な曲だけを練習します」というのは、生徒側に『何が何でも直すんだ!』という強い意志がなければ成立しません。隠れて難しい曲を弾き続けてしまえば、結局は治りきらず、(治すのがもっと大変となる)大人になってから、再度やり直さなければならなくなります。

 

 私が26歳の時・・・音大を卒業しピアニストとして活動を既にしていた頃ですが・・・どうしても弾けないパッセージがあり、当時の先生に相談をしました。答えは「じゃ、もっと練習しなさい」。そこに至るまでに、既に相当な時間をそのパッセージに費やしていた私には衝撃の言葉でした。

 

 その時に昔から何となく感じていた『演奏中に力が入ってしまう』『手首の動きがぎこちない』というのが根本的な問題なのではないかと思いました。これを直せば難しく速いパッセージが弾けるようになるかどうかは全く分かりませんでしたが、祈るような思いで自分流で脱力トレーニングの研究をしたのです。

 

 演奏活動を続けながらこの様なトレーニングをするのは大変困難です。ですので、とても長い時間をかけ克服することになりました。「自分が味わった苦い経験を他の生徒には経験して欲しくない」という気持ちが強く、オーディションでもどうしてもそのポイントに目がいってしまいます(笑)

 

 「今はマムシ指でも、手が大きくなれば自然に治る」「もっと練習すれば脱力は出来るようになる」と言われることもあります。治る場合もあるのかもしれませんが、私の様に治らない場合もあります。少なくとも脱力が出来ていれば、着実な上達を望むことが出来るでしょうし、指の故障を避けることも期待できるでしょう。まさに『 Haste makes waste(急がば回れ)』です。

 長い期間難しい曲を自己流で弾いていればいるほど、小さい子供でも矯正するにはかなりの時間がかかることがあります。この子はかなり矯正に時間がかかった方ですが、それでも結果からみると成功した例と言えるでしょう。この『問題の多かった男の子』の演奏を聴くたびに、彼が小さい時、目に涙を溜めながら大嫌いなツェルニーを我慢して弾いていた姿が脳裏に浮かびます(笑)今度は私の生徒達が次の世代にこのトレーニングを伝えていってくれればと思います。

 最初のオーディションでの出会いから8年。肩が殆ど上下しない安定したポジションで、非常に難易度の高いパッセージのコントロールが出来るようになった。テクニックが上達したことに伴い、以前は問題であった表現力も格段に伸びてきた。

 また、初期にしていた、身体を動かして全体重を手首に乗せて音を無理に出す癖も治り、会場の隅々にまで音が響かせられるようになった。

 脱力ができ、手首にも柔軟性があり、また指にも理想的な筋肉が付いた為、長時間難しい個所の練習を続けても、昔のように腱鞘炎を起こすことはなくなった。

Musical Notes

ファースト・トライはここが違う!

 

    弊社では最初にお客様からご相談を頂いたスタッフが現地でもサポートさせていただきますので、「もう一人のスタッフにはお話していたのですが・・・」というコミュニケーションに関する問題はありません。

 

 また、細やかな個人情報も何人ものスタッフで共有することはありませんので安心です。