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執筆者の写真ミキ ワグナー

黒猫ちゃん、お家に帰れなくて放浪状態


 この黒猫ちゃんは3年くらい前から我が家の周りをウロウロしている、余り飼い猫とは思えない程ワイルドなネコさんです。野良猫かと思っていて我が家の庭に立ち寄った時に餌をあげたり(といっても、最初は近寄るのも危ないくらい『ワイルド』だったので、エサが入ったお皿を置いておくだけ)していました。3年たった今も、この猫ちゃんを家族の誰も抱っこしてあげることが出来ません。そんなことしたら血の惨劇の幕開けになってしまいます。ご飯を用意してあげている時に猫キックをされたこともありました。


 半年ほど前に飼い主はお隣さんだということが判明!ノラちゃんだと思っていたので、「飼い主がいて良かった良かった(飼い主がいるにもかかわらず、何故ここまで暴れん坊なのかどうかという問題は別として)」と思っていました。その後も飼い主さんの言うことなど全く聞かない凄腕の我儘な黒猫ちゃん。我が家に押し入った時に迎えに来た飼い主さんに狼の如く凄味を利かして遠吠えをし、歯ぎしりしながら口から泡を吹いて威嚇。(←注:飼い主さんに対してです)猫パンチは当たり前。噛みつく、ジャンプして飛び掛かる・・・ これはもう人間が「狩られている」状態です。


 飼い主さんは「この猫は半分血統書付きの由緒正しい猫だ」と言っていました。えっ?半分血統書って・・・それは雑種ということでしょうか?


 最終的に飼い主さんも根負けしてしまい、「もう好きにしなさい!」と、日課だった『近所黒猫探索』を止め好き勝手にさせている為、ここ暫くはワイルドさに更に磨きがかかっていました。飼い主さんが外に置いてくれる食べ物を食べ、我が家の庭で寝っ転がりながらバードウォッチングに勤しみます。


 ところが、新型コロナが勃発し、飼い主さんが家に戻れない状態が続きました。お隣さんはお巡りさんだったのです。最近は特に外出規制が守られているかどうかパトロールする為、決まった時間に家に戻ってくることが出来ません。余りに疲れ切ってベッドに転がり込んでしまい、そのまま深い眠りに落ちてしまう為、猫飯を外に出しておくことも忘れてしまう日が何日も続きました。


 黒猫ちゃんは何度もお家に帰り、ご飯を探しますが空っぽのお皿があるだけ。暫くぶりに鳥でも取ってご飯の足しにしようと試みますが、長い間本職を休業していたため野生の勘が戻ってきません。そう、鳥と捕まえるのは人間を狩るより遥かに難しいのです。


 ワイルドさが売り物だった黒猫ちゃんは考えます。「こりゃマズイ・・・」 

 仕方なく馴染みの「お隣さん」に助けを乞うことにしました。今までにどれだけ悪行の数々を働いたかは水に流してもらって、伝家の宝刀の『猫をかぶる術』を駆使し、猫撫で声を出してご飯をねだります。「この猫、声が出るんだ・・・」家族中で絶句。そう、やる気になれば何でもできます。放浪も良いですが、まだまだ寒いイギリスでの放浪生活は結構きついです。


 さ、上手く家に入れてもらえればこっちのものです。「私がいる所は私のもの」と、勝手に我が家に上がり込んではメチャメチャなリラックス振り。「ご飯がちゃんともらえて、ま、寝るところも満足できる程度だし(すいません。段ボール箱で)、サービスレベルもこんなもんかな?」と思ったのか、それからは家に帰ることを拒否して、我が家に入り浸り。


 これはまずい。この猫の飼い主はお巡りさん。このままここにいると、「窃盗」「誘拐」「監禁」という罪に問われるのでは・・・ 何よりもお隣さんといざこざなんて起こしたくはありません。


飼い主さんに返そうとネコさんに箱に入っていただいてはみたものの・・・

 何とかエサで釣って箱に入っていただきましたが、その段ボールの蓋を閉めることが出来ません。この状態から蓋を閉めたらどうなるか・・・ そう、黒く毛深い腕が無数に蓋の間から伸びてきて、手当たり次第に引っかきます。


 諦めました。手が傷だらけになってしまいました。


 忙しい飼い主さんに「お宅の猫ちゃんはお仕事が落ち着くまで我が家でお預かりしています。いつでも迎えに来てあげてください」と置き手紙をし、数日が経ちます。お迎えはありません。


 いつか迎えに来てくれると信じて、今日も猫ちゃんは気ままな一日を過ごしています。


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